白柵と書いて「ラチ」と読みます。
もちろん充て字で…しかも僕が勝手に決めました。
仮名をふろうかとも思ったのですが…
ラチとは元々競馬用語ですが、物事が先に進まないことをラチ(埒)が開かないと言うことがありますよね。
ラチとは馬場の柵のことで…開かなければ馬が入って来れずに競馬が始まらないことからきています。(ほんとかよ!?)
「しろさく」と読んでいた方は今日から「白柵(ラチ)の下の刈られない芝」と読んでください。(いちいちうるせえなあ。)
白柵の下の刈られない芝(8)
中山競馬場の最後の直線は上り坂になっていて、ここまで全力疾走してきたブルーアイズにとってこの坂は壁のように立ちはだかったに違いない。
柴崎は今にも止まりそうな彼女を見ているのが辛かった。そのとき… ふいに夢の中で青井ひとみが言った言葉が脳裏をよぎった。
「私、命をかけて走りますから!」
次の瞬間、ブルーアイズは頭を二度三度斜めに動かし、自らハミを噛み直したかと思うと今度は首をぐっと下げて力強く坂を登り始めたのだった。
彼女にはゴールが見えていた。ゴールが何なのかもわかっていた。
後続馬は相変わらず少しずつ差を詰めてきてはいたが命をかけたその走りは間違いなく一歩ずつゴールに近づいていた。
残り200mを切ったときブルーアイズは左に右にとヨレ始めた。100mを切るともう真っ直ぐには走れない状態だった。それでも頭を低く下げて彼女は走り続ける。
柴崎はもう涙が止まらなかった。後続馬との差は5馬身から3馬身へと縮まり、外から一番人気の馬が一気に上がってきた。明らかに他の馬とは足色が違った。
前を行く馬はブルーアイズただ一頭…その差は2馬身差から1馬身差…そして半馬身差…ついに馬体が重なろうとしていた。
「ここまでか!?」
柴崎がそう思ったところがゴールだった。
柴崎は地下馬道へと向かう花道に走り出した。とにかくいちばん近い場所で彼女を見届けたかったが彼女がそこを通ることはなかった。
ゴールを過ぎてすぐに騎手がブルーアイズから下馬してブルーアイズはしばらく右前足をかばうように立っていたが耐えられずに倒れこんだのだった。故障発生である。
電光掲示板の一番上に「16」が点滅していた。
1着16番 ブルーアイズ ( 勝ちタイム1分57秒7 )
首差の勝利だった。
つづく…
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