雑用係兼理事長の日記

NPO法人スポーツ健康支援センターな日々


「この馬で勝負する!」
あの日、中山競馬場でニモは言いました。
ニモは悪友のニックネームで…
詳しくは知りませんが…
確かジェロニモからきていると記憶しています。


それは間違いなく昭和の出来事でしたが…
いつごろだったのか失念しました。
季節は冬だったような気がします。
この程度の記憶なので…
そのレースが何レース目であったとか馬の名前とか…
そんなことはまったく覚えていないのです。


ニモが「この馬で勝負する!」と言って…
指差した競馬新聞の出馬表は5枠でした。
5枠には2頭入っていて…
13頭立ての10番人気と13番人気という可哀想な枠でした。
もちろん無印(本命も対抗も何も印がついていない)です。
確か13番人気…つまり一番人気のない馬の方で単勝80倍くらいだったかな。


聞くとニモはどうやら10番人気の方の馬が…
こんなことは生まれて初めてというくらい…
パドックで見て何かを感じたというのです。
とは言っても彼はそう何回も競馬場には来ていませんが…


そして勝負するというからには全財産注ぎ込むことを意味します。
もっともその当時の僕らの全財産なんて何千円の世界ですが… (-。-)y-゜゜゜


10番人気の馬は戦績を見ても惨敗続きで…
この下にまだ3頭いるのが不思議なくらい見どころのない馬で…
「やめとけって…」
友人思いの僕は彼にそう忠告したのですが…
彼はいそいそと馬券を買いに人混みに消えていきました。


そのレースは確かメインの一つか二つ前のレースで…
僕はメインレース勝負だったので見送ることにしたのでした。
なので…ニモが勝負に出たそのレースは何となくボンヤリとゴール前で見ていたのです。


そして奇跡は起こりました。
何とニモが言っていた10番人気の馬がブッチギリで逃げ切ったのです!
中山競馬場がどよめきました。
何故なら2着に来たのが同枠の13番人気の馬だったのです。
当時馬連があったかどうか忘れましたが枠連で200倍近くの配当だったと思います。


すぐにニモを探そうと振り返ると…
いつのまにかニモは僕の後ろに立っていました。
「やったな!ニモ!」
「いくら馬券買った?」
興奮する僕の言葉に何の反応も示さないニモ…
ただ茫然と着順掲示板を見ています。


単勝買ったのか?」
そう聞くと無言で首を横に振りました。
複勝にしたの?」
その問いにも無言で首を横に振りました。
「じれったいなあ。もういいから馬券見せてみろよ!」


ニモから馬券を取り上げて見ると…枠連で…
もちろん5枠から流していたのです。
1−5 1000円
2−5 1000円
3−5 1000円
4−5 1000円
5−6 1000円
5−7 1000円
5−8 1000円
馬連ならいわゆる総流しですが…


「えっ?ちょ…ちょっと…5−5は?」
このときすでにニモは半ベソ状態で…
その問いにも無言で首を横に振りました。
「まさか…買ってないの?」
その問いにニモは初めて首を縦に振りました。


「何でだあああ!!??」
他人事ながらパニック状態になりそうな僕にニモは呟きました。
「7000円しかなくて…まさか13番人気の馬が2着に来るとは…」

凄いです。凄いバカです。
たった一頭消した馬が2着に来たのですから…ある意味天才かもしれません。
僕は心の中で「ずっと友達でいようね。」
そうニモに語り掛けていました。


● ノルディックウォーキング教室

● テニス教室