雑用係兼理事長の日記

NPO法人スポーツ健康支援センターな日々


小さな町のとても小さなケーキ屋の主人は毎年ジングルベルが聞こえ出すととても複雑な心境に陥っていた。


本当にごくありふれた家庭的なお菓子を作っているつもりだが、それがかえって評判となり、クリスマスには注文が殺到することとなる。


もう手作りの限界を超えていた。限定数は設定していたけど頼まれるとつい引き受けてしまう性格であることを本人も客も承知していた。


もちろん24日がピークだが、限界をはるかに上回る注文数は25日にも及ぶこととなる。そして、ようやく25日の閉店と同時にやり遂げた安堵感とともに…もし、この仕事をしていなかったら普通の家庭のようにささやかでも子どもたちとクリスマスを過ごして…なんてことを漠然と考えていた。


そんなことを何年も繰り返していたある年のクリスマス(25日)の晩にそんなケーキ屋の主人に思いもかけないクリスマスプレゼントがあった。


満身創痍で深夜に帰宅して何気なくテレビをつけるとメリーゴーランドのタイトルバック、オルゴールのBGMとともに…「クリスマスの約束」は始まり、それがその後、毎年放映されることとなる第1回目であった。



ケーキ屋の主人は「へえ、小田和正がこんな番組やってんだ…」ぐらいにしかその時は思わず、自宅ではめったに飲まないコーヒーを入れながら画面を見ていた。



やがて、コーヒーカップを持つ手が止まり、瞬きすることも忘れ、硬直したからだが癒されていく瞬間を感じていた。切なさはほんの一瞬で通り過ぎて行き、いつの間にか目をこすった手が濡れていることに気付いた。

小さな町のとても小さなケーキ屋の主人は、あのクリスマスの晩の気持ちを未だに言葉にできない。


今年も「クリスマスの約束」はあるのでしょうか?

ここ何年かは少し商業的になってきたような…