まあ、いろいろありますが…
短編の方は最終回です。
第4章 彼女が振り返る確率
太陽「今日は退屈な時間に付き合ってくれてありがと。 最後にお願いがあるんだ。月さんが電車から降りるころもう一度メッセを送るからその場ですぐに見てくれる?」
月 「了解!」
まもなく電車は終点の土浦に滑り込んでいった。
太陽はメッセを打ち込んで送信ボタンを押すだけの状態でポケットの中の切符を取り出して降りる準備をし、向かいに座っていた彼女の後ろに並んで扉の前に立った。
電車の扉が開き、彼女が土浦駅のホームに降り立った瞬間、太陽は送信ボタンを押したとほぼ同時に彼女はホームを歩きながら持っていたスマホを見た。
太陽「こんばんは。オレ、今、月さんの後ろにいるんだ(*^_^*)」
次の瞬間、彼女はさっと後ろを振り返ったのだ。
「月さん、はじめまして。」
振り向いた先には、やっと確信を得て微笑み、少し照れながら言う太陽がいた。
「ええーっ!?」
彼女はびっくりして思わず大声で叫び、ホームの前を行く人たちが一斉に振り向いた。
太陽もまた、その声にびっくりしたが、今の彼女が振り向く場面はドラマならスローモーションになっていたろうななどと考えるくらい何故か余裕があった。
「太陽…さん?」
「うん。太陽は本名なんだ。丘野 太陽、よろしくね。」
「びっくりした。本当にびっくりした。でも、どうして…?」
その後にどうして私だとわかったの?と続くことは容易に察したが、冬の駅のホームはとても寒かった。
「とりあえず改札を出ない?」と言って改札に向かって歩き出した。
「HNはどうして月なの?」
「私も本名なの。でも、読み方は月と書いて「ルナ」なんだけど…」
「ルナ?へえ、カッコイイね。」
「母親が河村隆一の大ファンで…」
「ああ、なるほど。LUNA SEAの…」
「そう、磯崎 月(ルナ)です。」 彼女はほんの少し頭を下げた。
不思議なことにさっきまであんなにヤキモキしてドキドキしていたのが嘘のように太陽は気楽な気持ちでしゃべっていた。初めてのようでそれでいてずっと会っていなかった幼馴染と話すような感覚だった。
少なくとも今まで幾度となくメッセを交わしていた会話の流れみたいなものが二人の間に出来あがっていたのかもしれない。
「そうだ。時間があったらラーメンでも食べに行かない?」
「行く行く。私、実はおなか減っててラーメン食べたかったの。」
「普通の醤油ラーメンでしょ?知ってるんだ。」
「私だって(太陽さんが)知ってること、知ってるわ。」
大きなマスクをしていて顔は隠れているけれど、確かに月は笑っていた。
改札を抜けるとき太陽はラーメンを食べながら月にクリスマスの予定を聞いてみようかなと考えていた。
人との出会いとは不思議なものだ。
その人と会うために用意された膨大な条件を積み重ねて、ほとんど奇跡に近いような確率で出会っているはずなのに、あまりにも日常茶飯事なのでそんなことは忘れてしまっている。
月との出会いもそんな奇跡の一つかもしれないが、土浦のまちのイルミネーションを見ていると神様がくれた少し早目のクリスマスプレゼントかもしれないと太陽は思ったのだった。
完
あとがき
報告書とかを書いていると決められた様式に決められたことを記入するという作業が続いて…思いっきりフィクションを書きたいと言う衝動に駆られるのです。
今回はtoto助成金の説明会に出席するため市ヶ谷に行ったときの帰りの常磐線でストーリーが出来あがりました。
たぶん今年も年末にそういった衝動に駆られて書くと思います。
もしも、この短編を最初から読んで下さった奇特な方がいらっしゃったら…
心からお礼申し上げます。
最後まで読んでいただき本当に感謝感謝です (*^_^*)
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