雑用係兼理事長の日記

NPO法人スポーツ健康支援センターな日々


気が付くとページビューが20000を超えていました。


この日記を書き始めて1年が経ちました。


2年目を迎えてこのブログもバージョンアップしないと…と思いつつそうそう日記ネタが日常的にあるわけでもないので去年の暮れから気になる文献を少しずつ紹介することにしました。


今回は、介護予防筋力トレーニング事業マニュアルに基づいた包括的筋力トレーニングが虚弱高齢者のQOLに及ぼす影響を調査した研究をご紹介します。


タイトル:虚弱高齢者における包括的筋力トレーニングがQOLに及ぼす影響
著 者:千葉敦子(青森県立保健大学)ほか
雑 誌:日本公衆衛生誌 第53巻第11月号 p851〜p858

 本研究は、A県B市において2004年度介護予防教室に参加した虚弱高齢者(要支援、要介護1・2と判定された人、要介護認定において自立と判定された人、その他虚弱高齢者)全19人を対象としました。


 教室では包括的筋力トレーニングが行われました。包括的筋力トレーニングとは、NPO地域ケア政策ネットワークが企画する筋力トレーニングのプログラムであり、厚生労働省の「高齢者筋力向上トレーニング事業」のモデルプログラムとして全国の自治体や事業所で使用されているものです。


 包括的筋力トレーニングは、マシントレーニングと機能的トレーニング(バランストレーニング)を組みあわせることにより、筋力を中心にバランス、柔軟性などの体力要素に対して包括的にアプローチすることが特徴です。介護予防教室では、1回90分で週2回、約3ヵ月間実施され、3ヵ月間のトレーニング終了時には居住先で行える個別メニュー(マシンの使用なし)が指導されました。運動指導は、このプログラムを習得した保健師理学療法士、健康運動指導士によって行われました。


 体力測定の結果、膝伸展筋力、開眼片脚立ち時間、10m最大歩行テスト等の移動能力を中心とした種目が有意に向上しました。健康関連評価スケールを用いたQOLの評価では8項目ある健康関連QOLを評価する項目のうち、「身体機能」、「身体の痛み」、「全体的健康感」、「社会生活機能」の4項目が3ヵ月のトレーニング終了時に有意に向上していました。さらに、主観的な効果に関する聞き取り調査では「身体が軽くなった」「歩くのが楽になった」等に代表される行動を行うことの容易性や「みんなに会うことが楽しい」「参加者やスタッフと話すことが楽しい」という幸福感・満足感の向上、「もっとこのトレーニングを継続してほしい」「有料でもいいのでやってほしい」という継続の意欲といったカテゴリーが抽出されました。


 運動とQOLの関連についてBergerらは、運動の実施が自己効力感の変化につながりひいてはQOLの向上に影響を及ぼすと報告しています。また、菊池らが成人315人に対して行った調査でも運動が身体・精神の両側面に好影響を及ぼすことを報告しています。


 著者は、本研究においても、包括的筋力トレーニングを行うことで、筋力、体力の増強がみられ精神面においても好影響を及ぼすことが明らかとなったと述べていて、トレーニングを行うことで身体が軽くなる、歩くことが楽になる、身体の痛みが改善する等の効果が、身体活動機能向上に相乗効果を与えたのではないかと考察しています。更に今後は、今回得られた結果が包括的筋力トレーニング特有なものであるかを検討していくことが課題であると述べて
います。


 虚弱高齢者にとって最も大切なことは、日常生活動作が保たれ自立できることであり、それがQOLの向上にもつながります。高齢者のQOLの向上に関しては検証された研究は少ないのですが今回紹介した文献を読むと、今後さらに研究が進むことが期待されます。